2026.09.20
本田直之さんの『セカンドハーフ戦略』を読んで 、20年前は驚き、今は重なった。

20年前、私は本田直之さんの言葉に、自分の常識を揺さぶられる驚きを感じました。今、『セカンドハーフ戦略』を読んで感じたのは、あの頃の驚きとは違うものでした。本に書かれた考え方が、これまで自分が実践してきたことと重なっていたのです。
本を読んで、新しい考え方に出会うことがある。
そして、本を通じて、自分が変わってきたことに気づくこともある。
本田直之さんの『セカンドハーフ戦略』は、私にとって後者の喜びを感じる一冊でした。
『レバレッジ・リーディング』に大きな影響を受けてから、およそ20年。
あの頃は、「そんな本の読み方があるのか」と驚きました。自分が当たり前だと思っていた読書の感覚が揺さぶられた。まさに、パラダイムシフトでした。
今回、ページをめくりながら何度も感じたのは、「自分も、同じようなことを考えていた」「気づけば、すでに始めていた」という感覚です。
もちろん、本田さんと同じところに到達したという意味では全くありません。
ただ、憧れの人の言葉を、自分の経験に引き寄せて受け取れるようになっていた。その変化が、素直にうれしかったのです。
人生の後半は、戦い方を組み直していい
2年前、井坂康志さんが翻訳された『ハーフタイム』を読みました。
そこで心に残ったのが、人生を「成功」から「意義」へとシフトするという考え方です。それ以来、私は人生の後半を、これまでの延長線上ではなく、戦い方を組み直す時間として意識するようになりました。
これまで積み上げてきたことを、この先、誰のために、何のために使っていくのか。
仕事で成果を出すことは、これからも大切です。そのうえで、成果の先に何を残したいのか、どんな人たちと時間を過ごしたいのかを考えるようになりました。
『セカンドハーフ戦略』を読みながら、その問いを改めて受け取りました。
戦い方、感情、身体、始め方、配置、つながり方。
私には、この本が、人生をさまざまな角度から組み直すきっかけを与えてくれたように感じます。
何を手放し、何を残し、何を始めるか。
人生の後半を考えるとは、今の自分に、この問いを投げかけることなのだと思います。
トライアスロンが、私を初心者に戻してくれた
過去の成功パターンが、次の人生の足枷になる。
このテーマを読んで、自分にとってトライアスロンの存在がどれほど大きかったかに気づきました。
仕事で経験を重ねても、競技の世界に入れば初心者です。知らないことばかりで、教えてもらうことばかり。昨日までの肩書きで、速く泳げるわけでも、走れるわけでもありません。
トライアスロンを始めてから、私はどこかに「新入社員」のような感覚を持てるようになりました。
チームの仲間からは、ありがたいことに「全力少年」と言ってもらっています。
この呼び名が、とてもうれしい。
まだできないことがある。やってみたいことがある。教わって、試して、少しできるようになることが楽しい。
そういう時間を持てたことで、過去の経験ややり方を、自分の完成された成功パターンとして扱わずに済んでいるのかもしれません。
本田さんの考えに重なるものを感じた背景にも、同じトライアスロンという競技に向き合ってきたことがある気がします。
太っていた過去まで、今につながっている
そもそも、私がトライアスロンに出会った入口はダイエットでした。
人生の後半を再設計しようとして、始めたわけではありません。
ところが、身体を動かすようになって、身体だけでなく、感情や好奇心まで変わっていきました。できなかったことができる喜び。初めての場所へ行く楽しさ。新しい仲間との出会い。
走ったり、バイクをこいだりする時間は、自分と対話する時間にもなりました。
なぜ、あの出来事が気になっているのか。
自分は何を大切にしたかったのか。
この経験は、仕事や人生のどんな場面につながるのか。
コーチングでの対話と、運動中の内省。その積み重ねによって、具体的な出来事から、自分なりの意味を見つける習慣が育ってきたように思います。
そう考えると、太っていた過去にも意味があります。
あの頃があったから、身体が変わる喜びや、健康のありがたさを、自分の実感として知ることができた。
変えたかった過去が、今の自分の考え方をつくってくれている。
人生は、過去を消して新しく始めるものではなく、これまでの経験を受け取り直しながら、少しずつ組み替えていくものなのかもしれません。
本の中の醸造家のお話からは、若松さんの「加齢はヴィンテージ」という言葉を思い出しました。
年齢を重ねることを、自分の深まりとして受け取る。そのためにも、一つひとつの経験を振り返り、意味に変えていきたいと思います。
未完成のまま始める。だから、labにした
今回、特にうれしかったのは、人生を壮大な実験として捉える考え方に触れたことでした。
私たちが始めたbecoming labにも、同じ思いがあります。
完成した自分を見せる必要はなく、途中にいる自分のまま、人と会い、話し、試してみる。その中で、自分らしい生き方を少しずつ見つけていく。
名前に「lab」を入れたのも、実験をする場でありたかったからです。
本に出てくる「β版思考」という言葉には、素晴らしいネーミングだなと思いました。
未完成で始めていい。やってみて、変えていい。
その感覚を、とてもわかりやすく表している。未完成を肯定することは、becoming labで私たちが大切にしたい思想そのものです。
そして私には、日々フィードバックをくれる人がいます。コーチでもある妻です。
シャワーのように浴び続けるフィードバックを、いつも素直に受け取れているかというと、まだまだです(笑)。
それでも、自分一人では見えない自分を教えてもらえることは、ありがたい。私自身も、完成を目指して固定される存在ではなく、日々修正されていくβ版なのだと思います。
達成したからこそ、手放せるものがあった
全力で取り組むことと、やめることを許すこと。
以前の自分なら、うまく両立できなかったかもしれません。
トライアスロンで日本選手権への出場が決まったことは、私にとって大きな達成でした。そして不思議なことに、その達成があったからこそ、少し違う考え方に進めた気がします。
これからも、同じ量のトレーニングを続けたいのか。
今の自分は、ほかにどんな時間を持ちたいのか。
完璧を目指さなくてもいい。やめることや、関わり方を変えることも、自分で選んでいい。
過度なトレーニングをやめて生まれた余白に、人との出会いが入ってきました。つながりが広がり、自分のハーフタイムが充実し始めた感覚があります。
身体を鍛えることに夢中になった時間があり、その経験を持って、今度は時間の使い方を組み直している。
自分に必要なものは、変わっていくのだと思います。だからこそ、その時々の自分に問い直し、手放すものと残すものを選び直していきたいのです。
まだ、自分には思いつかない選択がある
共感することが多かった一方で、「それは自分にはなかった」と感じる選択もありました。
たとえば、福岡に住むという発想。
どこで暮らすかを変えることで、日常や人とのつながりを変えていく。その自由な発想と、実際に選択する姿勢に、私は本田さんへの憧れを感じます。
仲間と鮨の取り組みを始めるお話にも、心が動きました。好きなことを、仲間と一緒に形にしていく。自分たちのlabでも、そんな実験が生まれたら素晴らしいと思います。
ヨットのお話に至っては、まだ私の想像の外でした(笑)。
でも、そういう世界があると知るだけで、自分が考えていた人生の選択肢は、まだ一部なのだと思えます。
人生の後半を、仲間と一緒に広げていく。
それはまさに、becoming labで育てていきたいことです。まだ見えていない選択肢に出会い、試しながら、自分たちの次の一歩を始めていきたいと思います。
20年分の読書と実践が、受け取り方を変えてくれた
『レバレッジ・リーディング』に出会ってからの約20年。そして、この数年、特に重ねてきた読書やセミナー、コーチングの学びと実践。
『7つの習慣』をはじめ、多くの本を読みながら、原則の大切さを学んできました。
もちろん、読んだだけで身についたわけではありません。
実践して、うまくいかず、振り返る。人から教えてもらい、また試す。その積み重ねがあって、今回の本を受け取る自分がいるのだと思います。
20年前は、自分にない発想に驚いた。
今回は、自分が歩いてきた道との重なりに驚いた。
そして、まだ自分には見えていない世界にも出会えた。
本を読むことは、新しい知識を得ると同時に、今の自分がどこにいるのかを知ることでもあるのですね。
『セカンドハーフ戦略』が教えてくれたのは、人生の後半を、過去の延長線上で生きるのではなく、これまでの経験を持ったまま、何を手放し、何を残し、何を始めるかを自分に問い直し、仲間とともに次の一歩を試していくということでした。
その問いを重ねるたびに、人生は一度決めた形に固定されるのではなく、経験や出会いを受け取りながら、何度でも組み直せる。未完成のまま始め、試し、振り返り、また選び直していけるのだと思います。
20年前に感じた「驚き」は、今では自分の実践との「重なり」になった。その変化を確かめられたことこそ、この本を読んだ大きな意味だったと思います。
何を手放し、何を残し、何を始めるか。
この問いを胸に、妻や仲間と、これからも未完成のまま実験を続けていきたいと思います。
私のセカンドハーフも、まだβ版です。
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